HACCP義務化の罰則を簡潔に解説。ハサップ未対応だと どうなる?

HACCP義務化の罰則を簡潔に解説。ハサップ未対応だとどうなる?

「HACCPが義務化されたけど、罰則はある?」
「どんな罰則があるの?」
「保健所の指導が入っても、今までは罰則なかったし、やらなくてもバレないんじゃない?」

2021年6月1日に、全ての食品事業者や飲食店事業者に導入が義務化されたHACCP。「義務化」と聞くと罰則があるのでは?と気になる方も多いのではないでしょうか?

HACCP義務化によって、HACCPを導入していない事業者には罰則が設けられています。罰則にも種類があり、「食品衛生法に違反した場合」と「各都道府県が定める条例に違反した場合」とによって罰則の内容が異なります。

この記事では、長年フードコンサルタントとして食品に係わるさまざまな事業者に衛生環境改善・衛生指導を行ってきたHACCP先生が、HACCP義務化による罰則について解説。
この記事を読むと、HACCP義務化によって設けられた罰則と罰則以外にどのような影響があるのかついて一通り学べるように構成しました。

・HACCP義務化の罰則
・HACCP未対応の場合に生じる罰則以外の影響

上記の内容を具体的に解説していきます。
それでは、HACCP義務化の罰則についてみていきましょう。

HACCP(ハサップ)義務化の罰則は?

HACCPは、2018年6月に食品衛生法が改正されことで導入が義務付けられました。法律で決められたということは、違反した場合には当然、罰則が科せられます。HACCP義務化による罰則には大きく「食品衛生法に違反した場合の罰則」と「各都道府県の定める条例に違反した場合の罰則」の2種類があります。

食品衛生法に違反した場合の罰則

HACCPを導入しなかったことで食品衛生法違反と判断された場合、「3年以下の懲役、300万円以下の罰金」「法人1億円以下の罰金」が科せられます。

保健所の指摘を無視して、改善がなされない場合、まずは「営業禁停止処分」が科せられ、営業禁停止処分にも応じない場合に上記罰則が科せられます。
「今まで罰則も何もなかったから今回も大丈夫でしょう」と気を抜いている事業者は、注意が必要です。

各都道府県によって定められた条例に違反した場合の罰則

食品衛生法が改正され、HACCP義務化されたことにより、各都道府県では、HACCPにおける条例が新たに策定されている場合があります。

地方自治法第14条3項によると、

「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮こ、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」

引用: 地方自治法 | e-Gov法令検索

簡単に説明すると、各都道府県が定める条例に違反した場合には、「2年以下の懲役、100万円以下の罰金」が科せられる、ということです。

各都道府県、地方自治体によってHACCP義務化に対する条例や罰則を設けていない場合もあります。とはいえ、食品衛生法違反に該当すれば前述した通り「営業禁停止処分」「3年以下の懲役、300万円以下の罰金」「法人1億円以下の罰金」の対象です。

地方自治法で特に条例が定められていないからといってHACCP義務化に従わなくても良いというわけではなく、食品衛生法違反に該当すれば罰則の対象になるため、注意しましょう。

罰則が発生するまでの流れ

保健所職員による立ち入り検査で、HACCPが導入されていないことが判明した場合、すぐに罰則を受けなければいけないか、というとそうではありません。
保健所職員による検査から罰則が発生するまでには、いくつかの手順をふみます。

厚生労働省によると、HACCP義務化について以下のように述べられています。

衛生管理の実施状況については、これまでと同様に、営業許可の更新時や保健所 による定期的な立入等の機会に、食品衛生監視員が確認を行います。新しい制度 ですので、当面の間は、導入の支援・助言が中心となります。分からない点は食品 衛生監視員に相談しながら進めてください。
第三者認証の取得は義務ではありません。
罰則の適用については、これまでの制度から変更はありません。
通常は、以下のような流れになります。
• 衛生管理の実施状況に不備がある場合、まずは口頭や書面での改善指導が行われます。
• 改善が図られない場合、営業の禁停止等の行政処分が下されることがあります。
• 行政処分に従わず営業したときは、懲役又は罰金に処される可能性があります。

引用: 厚生労働省:HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化

保健所の立ち入り検査→口頭・書面での改善指導→改善が行われない場合「営業禁停止」→行政処分に従わない場合「懲役又は罰金などの罰則」の順序で行政処分・罰則が科せられます。

一度の立ち入り検査だけで、行政処分や罰則が科せられるわけではないため、万が一HACCP義務化に対応しきれていない又は、衛生管理に不備があった場合には、改善指導に従って、しっかりと改善することで罰則を免れることができます。

HACCP未対応だと罰則以外にどんな影響がある?

HACCPが未対応の場合、罰則以外にも、さまざまな影響を受けることがあります。HACCP未対応の場合に、罰則以外にどんな影響があるのか詳しくみていきましょう。

営業許可取得・更新へ影響

HACCP導入の義務化によって、営業許可の取得・更新に大きな影響が出ます。
新規出店など、営業許可取得や更新が必要な場合には、新たに「衛生管理計画書」と「実施記録」(更新のみ)が必要です。

衛生計画書がない場合、営業許可の新規取得もできなければ、更新することもできません。
また、営業許可更新の際に「実施記録」がない場合、衛生管理や記録に不備があるとして罰則の対象になる可能性もあります。

このように、HACCP義務化に対応していないことで、そもそも営業許可の新規取得や更新ができず、営業ができなくなる可能性があるのです。

海外進出への影響

HACCP未対応の場合、海外進出への影響が出ることもあります。
具体的には、海外への輸出入の制限です。
HACCPは、衛生管理の世界基準として、既にアメリカやヨーロッパ諸国、オーストラリア、カナダなどの先進国で、日本より前からHACCPの導入が義務付けられています。

HACCP義務化を実施している先進国のほとんどが「HACCPが導入されている」ことを輸入要件としているため、HACCP未対応であると海外への輸出入ができない可能性があるのです。

企業のイメージダウン

消費者の立場から考えると、HACCP未対応の企業に対して「コンプライアンスが守られていない」「衛生管理が不十分で安心できない」というマイナスなイメージが蔓延る可能性があります。

また、消費者のみならず、銀行や取引先などからの信頼度の低下にも繋がるため、売上の低下はもちろん、従業員の離職、新規採用への影響など、事業を運営する上でさまざまなリスクを抱えることに繋がってしまうのです。

一度信頼を失うと、取り戻すには長い時間を要するため、HACCP導入・日々の衛生管理はしっかりと行うようにしましょう。

まとめ

罰則がなかった今までの衛生管理と異なり、HACCP義務化によって「食品衛生法違反による罰則」と「各都道府県で定められた条例に違反した場合の罰則」の2種類の罰則が設けられています。
罰則以外でも、営業許可の取得・更新や海外への輸出入など、HACCP未対応によってさまざまな影響が出てしまうことも。
保健所の立ち入り検査によって改善指導がなされた場合には、直ちに改善するようにしましょう。
HACCPに沿った衛生管理を徹底し、より安心安全な食品を届けましょう。

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